「HEAVEN SENT CHILDREN Another Story」
「-PANIC HEAVEN AND HAPNING HELL-」



　　　１



「つまりですな、文化と酒というものは錬金術的な……」
──吉川良太郎『苦艾の繭』



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うだるような暑さがこの日本を直撃している。そんな夏の日。
オダギリ博士の家では、
大方の予想通りサンスクリットがリビングでクーラーの冷風を全身に浴びて
ソファでうだうだしていた。口にアイスを頬張り、幸せそうな表情でマンガを読んでいる。


「サンスクリット、そんなとこでゴロゴロダラダラしてんじゃないの！目ざわり！！」
リキュールがフライパンを片手に怒鳴っている。彼女は可愛いデザインのエプロンをつけていた。


「へいへい、これ読み終わったら部屋行って孤独にダラダラしますよーだ」
「手伝おうとかいう発想はないのかあんたの脳には・・・」

　
リキュールはサンスクリットの隣に座り、テーブルの上のジュースを飲んだ。
サンスクリットは一瞬で起き上がる。


「あ、あたしの！」
「いいじゃないの、減るもんじゃないって」
「減ってるじゃんっ！減ってるよっ！！」


ブツブツ言う黒髪巨乳娘を横目に、リキュールは大きく身体を伸ばして、
今度は彼女が寝転んでしまった。


「・・・あー、しあわせ。」
「でしょー？　・・・あれれ？やけに静かだけど、ユーロパっていないの？」





そう言えば今日は一度もユーロパの姿を見ていなかった。
「マリベールさんと遊びに行ったわよ」リキュールは答える。
「また変な生き物貰って来るんじゃないだろうなぁ」
以前のタランチュラはともかく、なんとか博士が丁重にご遠慮させていらだい
たアナコンダのこともあり、ふたりは相当不安になっていた。
あのタランチュラのおかげでマリベールとユーロパの誘拐事件も解決できたし、
あれから少しは愛着も湧いたが（とはいえほんの僅かなものだが）、不気味なものは不気味なのだ。
しかし・・・一抹の不安はある。それも、先程のものとは別のかたちで。


「またあいつら、誘拐されたりして」
「まさかぁ。いくらユーロパでもそこまで学習してないなんてことは・・・」

　
会話が途切れた。沈黙が部屋中を駆け巡る。やがて、ふたりの額から、冷や汗が流れた。
同時に時計を見る。


「何時にでかけたの！？」
「お昼過ぎ・・・」
「今は何時？」
「２０時ね・・・」
「そういえばハカセも見ないね・・・・・・」
「珍しくお仕事・・・・・・・・ロサンゼルスで学会があるんだって・・・・」
「・・・・てことはなに・・・？」
「・・・なにかあったら、私たちだけで対処するしかしかないってこと・・・」

　
クーラーにあたっているのに、汗が流れてくる。もちろんそれは冷や汗だ。


「……ユーロパー！！　はやく帰ってこーい！！」
サンスクリットが叫んだ。